私と理論

数学の話を主に書きます

2022年振り返り

去年に続いて2022年の振り返りをします. 2022年の内に書く予定だったのに書ききれませんでした. 特に有益な情報はなさそうです.

仕事(研究)

とりあえず今年は主著で海外のジャーナルに1本,共著で国際会議に2本でした. ちょっと物足りない.

ジャーナルはレビュアーの1人が論文をめちゃくちゃ読み込んでくれて,それは嬉しいんですが,「こうしたら良くなるよ!」という案が大量に送られてきて対応するのが大変でした.ただ,頑張って真摯に対応したところすっと採録されたので,それも含めて良い経験になりました.

共著の国際会議は後輩がめちゃ頑張ってくれていいところに2本通せました. 基本後輩がざっくりしたアイデアと原稿を作ってくれて,それに僕がコメントしまくったり修正しまくったりするみたいな感じで書いてて,それが噛み合っていい感じの論文が書けました. でもこういうのはたたき台を作る人が一番偉いので,やっぱり後輩が偉すぎる.

他には,会社の研究お披露目会的なところでの展示担当をしたり,そのほか色々やってました.

入社以来ずっとお世話になってきたとても尊敬できる上司が退職したり組織がシャッフルされたり色々ありましたが,色々な人のおかげで割と平和に過ごすことができたと思います.来年も平和だといいな〜

社会人博士課程

4月から社会人博士課程に入学して博士号をとるべく活動しています. 研究者として働くのであれば取っとかないとキャリアの幅が狭まるし,取るなら早く取った方がいいので行かないとな〜と5年くらい前から思っていたのですが,得意の先延ばし癖でだらだらと過ごしていました. ついに一念発起したのが2021年の秋頃で,そこから今の指導教員にコンタクトをとったり受験対策したりして,2022年4月に晴れて入学となりました.

自分の勤めている会社は時間の融通が効く方なので,他の会社からの社会人博士課程進学者よりは楽だと思うのですが,それでも今年はこれにかなりの時間を使っていました. しかも自分は1年で博士号を取ろうとしているのでてんやわんやで,紙一重のタイミングも多かったです.(この辺は卒業できたらまた別に記事を書くかも)

進学して思ったことは,書類の作成・提出の難易度がかなり高いということです… 会社だと担当の人がいて何か忘れていたらリマインドしてくれたりするんですが,大学は基本自己責任なので忘れると最悪留年・卒業失敗の形で返ってきます.実際何度か致命的なミスをしかけました.

あとは指導教員が頭が切れまくるので指導を受けていて面白いです.頭がいい人と話すのは楽しい.

これを書いてる今も博論提出間近で,提出すればあとは最終審査を残すだけになるので,最後まで気合いで走り抜けます!

競プロ

今年は基本的にはヒューリスティックをやってました. とりあえず黄色になりました.

今年面白かった問題は間違いなく AHC016 Graphorean でした. こういうコンピューターサイエンスバトルが好きです. AHC011 Sliding Tree Puzzle も二段階の問題をどうバランスして解くか考えるのが楽しかったです.

もっと上を目指したいんですが,平均的にパフォは出るけど大成功はない,という感じであんまりレートが上がらなくて困ってます. 来年は爆発したい. あと,長期に比べて短期の成績が弱すぎるのでなんとかしたい.どうすればいいのか誰か教えてくれ(?) 一時期博論がヤバすぎて参加 streak を切っちゃったのも悲しいので来年はなるべく全参加したいです.

アルゴは全くやっていません(たまにちょっとABCに出たりしたけど). 言い訳なんですけど,アルゴって精進しないと実力・レートが落ちやすいので実はめちゃくちゃ時間が必要ですよね… (ヒューリスティックは本番中に頑張れば割となんとかなる & レート下がらないので雑に出れる)

その他

  • 今年もビールを飲みまくっててたのですが,新しい世界を広げようとワインもたくさん飲むようになりました.種類が多いし料理と合わせるのが楽しいです.気付いたら1本なくなってなりするのが危険.全く詳しくないので,詳しい人,色々教えてください.

  • 在宅勤務ばっかりやってたので美味しいものを自力で手に入れるために料理にハマり始めました.イタリアン料理の動画を見てひたすらパスタを作っていました.料理は手順に対する再現性がとても高いので分かりやすく最適化の楽しさがあります.来年は魚とか捌けるようになりたいです.あと体系的な勉強をしていないので調理師免許取りたい(?)

  • 今年も有馬記念の馬券が当たりました(三連複だけど).今年何度も苦汁を舐めさせられたジェラルディーナで最後勝てたのは嬉しかった.来年も当ててえ

  • 麻雀もそこそこやりました.ただ最近は雀魂ができてなくてとても良くないです.雀荘行ったらコロナになって博論中間発表が危うくなった(?)

  • 結婚しました    …弟が.

今年の目標の振り返りと来年の目標

2022年の目標

  • AHC → 頑張った
  • Kaggle → やってない
  • 英語 → オンライン英会話を初めて最初は楽しかったけど一瞬で飽きた.もう少し強い動機かゲーミフィケーションがないと自分には厳しい…
  • チェコに行く → 行ってない
  • 雀聖になる → 雀豪2止まり.もっと打てば上がると思うけど,打数が足りてない.

こいつ何も目標達成してないな. まあ博士課程が入ってきたから仕方ないということで…

2023年の目標

  • AHC 橙
  • Kaggle やる 一つのコンペでもいいからフルで参加する
  • オンライン英会話をとりあえず3ヶ月は継続する
  • チェコでウルケルを飲む
  • 雀聖2になる

面白かった本,面白かった映画

長くなりそうなので最後に回しましたが,今年読んで特に面白かった本と映画を挙げます.今年発表された作品ではなく,今年僕が見た作品です.ややネタバレ注意. これを書いてて思ったんですが,twitter に鑑賞した作品を垂れ流しておくと,あとでまとめるときに便利ですね. (「見た」「読んだ」で検索すると良い)

  • テスカトリポカ(佐藤究,2021)
    今年読んだ本ではこれが一番面白かったかもしれない. メキシコカルテルの長がメキシコを離れて東南アジアで日本人外科医と遭遇して日本で臓器ビジネスを始めるという話. こう書くとシンプルなんだけど,物語全体にわたってアステカ神話が執拗に絡んでくる. タイトルのテスカトリポカもアステカ神話に出てくる神様,「煙を吐く鏡」. 基本的に僕はオカルトが絡むミステリが好きなので(京極夏彦とか)めちゃくちゃ刺さった. こういうのもっと読ませてくれ〜〜

  • ベルカ,吠えないのか?(古川日出男,2005)
    これもめちゃくちゃ面白かった. 第二次世界大戦中,太平洋のキスカ島に取り残された軍用犬4匹から始まる犬たちが繁殖を繰り返して世界中に広がりながら,20世紀の重要な事件に絡んでいく,という話. 基本的にはずっと犬の物語なんだけれども,冷戦の物語であり,ソ連の物語でもある. 特徴的なのは謎の語り手による熱のある語り口で,ずっと犬たちに対して「イヌよ,イヌよ」って語りかけている. キスカ島に軍用犬が取り残されたのは事実だがあとは創造らしく,作者のとんでもない想像力にただただ驚かされた. 去年「三体」を読んだ時も思ったけど,この世界にはとんでもない想像力を持った人がいて,その想像力をぶつけられるのってとても気持ち良い. 自分はソ連が崩壊した1991年に生まれて冷戦の時代を全く知らないので,その時代の空気感をよく知れたのも良かった.

  • 匣の中の失楽竹本健治,1991)
    いわゆる「四大奇書」に挙げられる作品なので読んでみたけど,そんなにクセがあるわけでもなく推理小説として面白かった. 「ドグラ・マグラ」は学生時代に読んだけど途中で眠くなってやめたので…(今読んだら面白いのだろうか?) 偶数章と奇数章で話が入れ子になってて頭がバグっていくのが楽しい. ミステリマニアの登場人物たちの会話がやや痛いのが玉に瑕.

  • 同志少女よ,敵を撃て(逢坂冬馬,2021)
    ドイツ軍に家族を殺されたソ連の少女が狙撃手になって独ソ戦で活躍する話. 話が面白いし読みやすい,キャラクターも魅力的なので色んな人におすすめできる. 物語に関係ないけど,これを読むにあたって独ソ戦のことを調べて,こんなに人が死んだのかと驚いた(少なくとも3000万人?). あとかなり百合要素が強かった?ので,何故か僕の twitter のタイムラインに多い百合愛好家の人は読むと良いかもしれません.

  • ラッシュライフ伊坂幸太郎,2002)
    伊坂幸太郎は「重力ピエロ」を中学生くらいのときに読んで以来久しぶりに読んだんだけど,読みやすいし面白かった. 起こっている事件はけっこー陰惨なのに読後感は妙に爽やかなのが不思議. 「アヒルと鴨のコインロッカー」も読んだけど,「ラッシュライフ」の方が好きだった.

  • ウクライナ戦争(小泉悠,2022)
    ウクライナ戦争は間違いなく2022年の重大ニュースの一つなんだけど,そのときそのときのニュースで逐次的に追っているだけで体系的な理解がなかったので,勉強をしようと思ってこの本を読んだ. 戦争の背景や開戦までの経過が論理的かつ簡潔に書かれていて,かなり好感が持てる文章だった. こういうのを読むと文系の研究は不要なんて口が裂けても言えないね.

  • オデッサ・ファイルフレデリック・フォーサイス,1972)
    オデッサ」はウクライナ港湾都市のことではなくて,ナチス幹部の戦後の支援のために結成された秘密組織. ドイツの若いルポライター強制収容所での過酷な体験を綴ったユダヤ人の老人の日記を発見して,そこに出てくる強制収容所の長を追跡するという話. とにかく細部まで情報量が多くてものすごい取材をしてるんだな〜と感じる. これも話が面白いだけでなくて戦中・戦後のドイツ・イスラエルの歴史の勉強になる. 今,同じ作者の「悪魔の選択」を読んでるんだけどこっちも面白い!

映画

  • ドライブ・マイ・カー(2022)
    とりあえず今年見た映画では一番面白かったかもしれない. ネタバレなしで説明するのが難しいんだけど,過去に正しく向き合えっていうメッセージが好き.

  • すずめの戸締り(2022)
    新海誠,普通の映画で20分くらいかけるシーンを5分くらいでやってくれるから良い. 映像も良くて新海誠の映画に出た場所には行ってみたくなる. 話もかなり好きで,伝えたいことはドライブ・マイ・カーに似ているかな? 猫がかわいい.

  • 女神の継承(2022)
    韓国・タイ共作のフェイクドキュメンタリーホラー映画. 土着の宗教的な要素が強くてその時点でかなり好き. ホラーの演出も全体的にしつこくてねっとりしていてこれも好み. あとはフェイクドキュメンタリー特有の「お前霊に襲われてるのにカメラ回してる場合じゃないだろ」問題を解決してくれれば… 監督のナ・ホンジンの過去作は全部見たけどどれも面白かった.

  • ゴーストランドの惨劇(2018)
    マーターズ」っていうめちゃくちゃキツいことで有名な映画の監督パスカル・ロジェの作品. とにかく痛くて憂鬱なのでそういうのが無理な人は見ない方がいいんだけど,大丈夫な人にはおすすめ. 話のプロットに大きな捻りがあって面白いし,絶望的なシーンが多いんだけどそこに立ち向かう強さを感じる. 新作出してくれ

  • クリーピー 偽りの隣人(2016)
    「Cure」という映画がめちゃくちゃ好きなので黒沢清を見ようシリーズ.正直話はよく分からんっていうか崩壊気味な気がするんだけど,香川照之がヤバすぎてそれだけで見る価値がある.なんかヤバい悪役ってそっちばっかり見ちゃうな

  • パプリカ(2006)
    アニメとしても面白いんだけど,とにかく音楽が良すぎる.平沢進は天才.

  • ソナチネ(1993)
    北野武の昔の映画.「アウトレイジ」とかはコノヤローコロヤロー凄んでるだけに見えるのであまり好きではないんだけど,これはかなり良かった. 遊びと暴力の距離が近すぎるのが新しくて面白い. 「HANA-BI」も良かった.

  • デスプルーフ in グラインドハウス(2007)
    タランティーノの映画って刺さる映画と刺さらない映画の差が激しいんだけど,これはかなり良かった.前半も後半も好き.

  • 女優霊(1996)
    ホラー映画,話自体はそんな珍しい話ではないんだけどなぜかめちゃくちゃ面白かった.テンポが良くて演出が良かったからかな?