私と理論

数学の話を主に書きます

私とアンテナアメリカ関内店

数学とかアルゴリズムの話をよく書いているこのブログだが,今回はそれらには全く関係ない,ビールに関するポエムを書く.

皆さんはアンテナアメリを知っているか?

アンテナアメリカは株式会社ナガノトレーディングが運営している,アメリカのクラフトビールや料理が楽しめるビアバーで,現在は東京店・横浜店・品川店が営業している. しかし,このブログで話をしたいのは現在休業しているアンテナアメリカ関内店の話である. 関内というのは横浜駅から2駅の場所で,近くにハマスタや飲み屋街として有名な野毛がある.

自分はこの店舗が大好きでよく通っていたのだが,今年の3月から当面休業になってしまい,再開するのかどうかよくわからない(参考: 関内店 – Antenna America)という状況になっている. 初めてこのニュースを聞いたときはかなり衝撃的で悲しかったのだが,時が経てばまあ忘れるだろうということで4ヶ月が立ち,何故か先週の金曜日の朝起きた瞬間に「アンテナアメリカ関内店に行きたい!!」という感情が突沸した.しかし悲しいかな行くことはできないので,関内店に関するポエムを書いてこの気持ちをお焚き上げしようという次第である.

その出会い

僕がアンテナアメリカ関内店に出会ったのは,会社のおじさん(お兄さん?)から教えてもらったことが始まりである.

自分は東京の大学に通っており東京に住んでいたが,就職先が横須賀の南の南,この世の果てのようなところだったので横須賀中央に住むことになった. 学生の頃からビールが大好きで,特にビアバーに行くのが大好きだったので,社会人になって自由に使えるお金も増えたということで横須賀のビアバー,あるいは割とすぐに行ける横浜のビアバーを色々と物色していた.

そんな僕に対してその会社のおじさん(お兄さん?)はこう行ったのである,

「神奈川に住んでて横浜の関内のアンテナアメリカ行ってないのは,ヤバいよ

なかなか強い言葉である.これが神奈川のビール好きの総意なのかどうかはよく分からないが,こんなことを言われてしまってはビール好きの血が騒ぐ,行かねばならぬとなって関内店と出会うことになりました.そして通い詰めてしまうことになるのだった…

その魅力

関内店の魅力というよりも,そもそものアンテナアメリカの魅力というのがある.この点は東京店・横浜店・品川店でも同じはずなので(東京店には行ったことがないので分からないが),今でも体験できる.

まずはなんといってもそのビールの種類と安さである.タップがそもそもたくさんあるし,より重要なのは冷蔵庫に大量に入ったアメリカ輸入(?)の缶ビールである.冷蔵庫がめちゃでかいのでかいので量も種類も半端ではないし,頻繁に種類が入れ替えられているので毎回新しい発見がある.しばしばレアなビールも入ってるっぽい.ビールの好みは色々あると思うのだが,アメリカンIPAやヘイジーIPAが好きな人はここに来れば間違いないと思う.一時期ヘイジーにハマった時は狂ったようにここに来ていた.

食事も美味しい.バーガーやポテト,フライのようなアメリカンでジャンキーな食事がラインナップである.どれも美味しくておすすめだが,自分が推したいのはフライコンボ,特にその中に入っているハラペーニョである.何が良いって辛い,とにかく辛い,はちゃめちゃに辛い.見た目もししとうくらいにしか見えないので,知らずに食べたら大変なことになる.僕は割と辛いものが好きだし大丈夫な方だが,それでもしばらく悶絶する感じである.ただそれがビールに合う.辛すぎてビールを飲み,それでも足りずにビールを飲み,酔いが劇的に進行していることもしばしば…(だがそれが良い)

ここまでは関内店に限らず,アンテナアメリカ全般に言える良さである.これでも十分だが,関内店はこれ以上に大きな魅力がある. それは一言で表せば,あの雰囲気という他ない.

関内店の立地は目立つ場所ではない.これは主要な駅ビルに入っており人通りも多く目立つ場所にある他の店舗と大きく異なる点である. 関内駅から海とは逆の方向に歩き,特に目立ちもしない普通のビルに入り,エレベーターで5階に登ればそこにアメリカがある.あのまるで秘密基地についたかのようなワクワク感!中には海外の方がいることも多く独特の雰囲気が漂い,テレビで流れる横浜DeNAの試合はワクワクするものである.

そして最も重要なのはテラス席である.関内店ではビールをプラスチックカップに移し替えれば自由にテラス席に移動することができる. そのテラス席で青空の下,太陽の下で飲むビールを飲むことの清々しさ!!屋外で飲むとビールがまた一つ別の段階に到達することは,ビールを飲んだことのある人なら誰もが同意してくれるはずである.

テラスでビールに差す後光

テラス席は5階なので,周りの景色がよく見える.その景色が綺麗…かというと,それほど綺麗なものではない.寧ろ綺麗ではない寄りかもしれない. 周りに見えるのは雑居ビル,大きなマンション,雑居ビル,はるか遠くにかすかに見えるタワーマンション,雑居ビル… そんなものである. 横浜の風景といえば,みなとみらいや赤煉瓦や大さん橋に代表される,海と人工物の調和した瀟洒で広大な風景だろう. そのような景色は関内店からは全く見えない…

だがそれが良いのだ.それが本質的である. 土日を使って昼から飲もうとする,何なら有給をつかって昼から飲もうとする,そんなどうしようもない我々に必要なのはオシャンな景色ではない. そんな我々を迎え入れてくれるような,日常の気配に溢れ,けだるく,それでも人々の生活の力強さを俯瞰できる,あのアンテナアメリカ関内店5階からの風景なのである. 昼下がりの停滞・重い橙色の夕焼け・賑やかさと寂しさを湛えた夜の始まり,これらは他にはない,あのテラス席でしか味わえない感傷である.

テラスからの風景

さらに,アンテナアメリカに限らずあの一帯はビール好きには嬉しいお店がたくさんある. ピルスナーが充実していて他のビールの種類数が多い横浜ベイブルーイング,馬肉とビールの組み合わせが最高な254beer(今は白楽に移転してしまった,移転先もとても良い),スコットランド料理とスコットランドのビールが楽しめるワイバーン,その他野毛に行けばたくさんのクラフトビールと美味しい料理のお店がある.関内駅の反対側にいけば厩の食卓馬車道タップルームをはじめとした更にたくさんのビアバーがある.僕はあまりビールコミュニティに詳しくないのだが,偶然隣に座ってお話ししたおじいさん曰く,あのあたりで無限はしご編するのは横浜のビール好きの定石のようである.

終わりに

ただ一つのビアバーについてたくさん語りたいことがあるのは幸せなことである. 僕の20代後半は,アンテナアメリカ関内店と競プロらへんで特徴づけられてしまうのではないだろうか. 願わくば関内店には早く復活してもらいたいが,色々と事情もあるだろうと思うので,気長に待たせて頂きます.